こんにちは。暮らしっく不動産の徳留です。

最近、夕飯に鍋を作る機会が増えました。
先日はぼくのいとこが東京に遊びに来ていたのですが、ほうとううどんを作ってあげました。
九州からあまり出たことのない彼にとって関東の味は新鮮だったようで大変喜んでおりました。
というわけで最近はカセットボンベの減りが早いです。

火の元注意ですね。

というわけで、今日は防災のお話。

"防火地域と準防火地域と都市計画"について考えていきたいと思います。

1. 江戸の火事

wikipediaの江戸の火事の項目を読んでみると東京を江戸と呼んでいたいた頃から東京は火事が多かったそうです。
その主な原因は。
  1. 人口の増加に伴う密集した住宅地
  2. 家の構造が紙と木でできている
  3. 江戸の独特の気象条件
  4. 放火
このように言われています。

1.人口の増加

江戸
1640年には40万人であった人口は1721年には110万人になっていたそうです。

約80年で70万人も人口が増加しています。(ちなみに現在は1,335万人)
高層ビルもない時代にそれだけの人が住んでいたわけですから、当然、密集したエリアに住むことになります。

(画像 https://ja.wikipedia.org/wiki/江戸 より)

2.家の構造が紙と木でできている

江戸 屋敷
江戸時代ですからすぐれた建材もありません。 

基本は紙と木。

一度火が点けば簡単に燃えていきますし、隣の家にも延焼していきます。
密集したエリアで火事が起これば一気に燃え広がります。
(画像 https://ja.wikipedia.org/wiki/江戸 より)

3.江戸の独特の気象条件

冬場、江戸には極めて乾燥した風が北西方向から吹いていたと言われています。
一度火が点けば風にのって延焼がひろがる原因となります。

4.放火

人口の多く集まった江戸ですが、生活に困窮するものも出てきます。
そういった人たちが、ストレス発散として放火を働くというケースもあったようです。
現代でいうところの「むしゃくしゃしてやった」というやつですね。
あとは火事のどさくさにまぎれて火事場泥棒をする輩。人が多いと色々ありますね。

(画像 https://ja.wikipedia.org/wiki/江戸 より)

2.  江戸の防火対策

幕府も何もしていなかったわけではありません。
防火対策として大名屋敷や寺社を移転させ火除地・広小路の確保、瓦葺や土蔵造りの採用による不燃化の推進をはかっていたようです。放火犯対策も厳罰化して対応してそうです。
ざっと、江戸の防火対策をなぞってみましたが、ここからわかる重要なキーポイントは
  1.  火除地・広小路の確保
  2.  住宅建材の変更
なんですね。
延焼を防ぐというのを念頭に防火対策がすすめられていたのがおわかりいただけるかと思います。

3.  現代の防火対策

話を現代に戻します。

火事の延焼を防ぐには、住宅建材の変更と、空間の確保が重要なのはおわかりいただけたと思いますが、現代においてもその考えはきちんと継承されています。

人が集まる駅周辺の商業エリアや避難や消火活動において確保しなければならない主要幹線道路の近辺と住宅地では防火基準が少々異なります。

都市計画のイメージ

図の説明をします。
灰色・・・主要道路です。ものすごく簡単にいえば大通りです。
赤色エリア・・・防火地域です。構造や建築計画に制限があります。
青色エリア・・・準防火地域です。防火地域ほどではありませんが構造や建築計画に制限があります。

後述しますが、防火地域のほうが防火基準が厳しいです。火に強い構造や建材が求められます。
その代わり、建ぺい率の緩和が認められる場合もあります。

これはどういうことかというと、万が一、上記の図の準防火地域で火事が起きたとします。
以前であれば延焼していき、道路を挟んだ向かいの街にまで延焼してしまうかもしれません。
ですが上記のような街づくりをしていくと、万が一準防火地域で火事が起きても、防火地域エリアが耐火壁のようになり隣の街に延焼しにくいんですね。延焼を最小限に抑える事ができます。

実際に高田馬場近辺で確認してみます。
調べ方は昨日のコラムにもあった東京都都市整備局のHPで調べることができます。


茶色の太い線が主要道路です。
まずは主要道路近く。

次に街ブロックの真ん中あたりを確認してみます。

駅近くも見てみましょう。

防火地域です。

東京都都市整備局のHPにもこんな条文があります。

(6) 防火地域及び準防火地域

防災上重要な地域を対象に、原則として 400%以上の容積率が指定された区域 に防火地域を指定する。特に、避難場所や避難道路の安全性を高めるため、都市 防災不燃化促進事業、沿道地区計画等の活用にあわせて防火地域を指定する。

また、都市計画で外壁の後退距離の限度や一定規模以上の敷地面積の最低限度 が定められた場合など、防災上の措置が講じられた区域を除き、50%を超える建 ぺい率が指定された区域に準防火地域を指定する。

次の項では具体的な内容を見ていきます。

4. 防火地域

防火地域と準防火地域の違いがおわかりいただけたかと思います。主要な幹線道路や人が多く集まる商業エリアでは防火地域に指定されているところが多いですね。

防火地域の項は都市計画法と建築基準法によって定められています。

第六十一条  防火地域内においては、階数が三以上であり、又は延べ面積が百平方メートルを超える建築物は耐火建築物とし、その他の建築物は耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない。ただし、次の各号の一に該当するものは、この限りでない。
 延べ面積が五十平方メートル以内の平家建の附属建築物で、外壁及び軒裏が防火構造のもの
 卸売市場の上家又は機械製作工場で主要構造部が不燃材料で造られたものその他これらに類する構造でこれらと同等以上に火災の発生のおそれの少ない用途に供するもの
 高さ二メートルを超える門又は塀で不燃材料で造り、又は覆われたもの
 高さ二メートル以下の門又は塀
難しく書いてありますが、要は
・延面積が100m2を超える建築物については耐火建築物とする
・延面積が100m2以下の建築物については、3階建て(地階を含む)以上の建築物については耐火建築物とする。
ということです。法律は例外措置がたくさんあるので、これが全てではありませんが、大まかな内容はこういうことです。

4-1.  耐火建築物

では耐火建築物ってなんでしょう?
これも建築基準法で決められています。

建築基準法第2条第1項第9号の2


  • イ その主要構造部が(1)又は(2)のいずれかに該当すること。
    • (1) 耐火構造であること。
    • (2) 次に掲げる性能(外壁以外の主要構造部にあつては、(i)に掲げる性能に限る。)に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。
      • (i) 当該建築物の構造、建築設備及び用途に応じて屋内において発生が予測される火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
      • (ii) 当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
  • ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。
ここでいう主要構造というのは柱、梁、床、屋根、壁、階段をさします。
防火エリアの建築においては耐火被覆を行います。熱に強い外壁を使用したりします。
ALC壁なんかはその典型です。
また、構造の部位によっても熱に何分耐えるという厳しい規定があります。
その基準は出火して消防車がきて消火する時間も計算されているそうです。

下の写真の梁の部分をみてください。
耐火構造にするために梁に灰色のものが巻きつけてあるのがわかるかと思います。

5. 準防火地域

次に準防火地域について考えてみます。

こちらも都市計画法と建築基準法によって定められています。

(準防火地域内の建築物)
第六十二条  準防火地域内においては、地階を除く階数が四以上である建築物又は延べ面積が千五百平方メートルを超える建築物は耐火建築物とし、延べ面積が五百平方メートルを超え千五百平方メートル以下の建築物は耐火建築物又は準耐火建築物とし、地階を除く階数が三である建築物は耐火建築物、準耐火建築物又は外壁の開口部の構造及び面積、主要構造部の防火の措置その他の事項について防火上必要な政令で定める技術的基準に適合する建築物としなければならない。ただし、前条第二号に該当するものは、この限りでない。
 準防火地域内にある木造建築物等は、その外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分を防火構造とし、これに附属する高さ二メートルを超える門又は塀で当該門又は塀が建築物の一階であるとした場合に延焼のおそれのある部分に該当する部分を不燃材料で造り、又はおおわなければならない。

難しく書いてありますが、要は
・延面積が1500m2を超える建築物、あるいは4階建て(地階を除く)以上の建築物については耐火建築物とする。
・延面積が1500m2以下の建築物については、500m2を超える建築物については耐火建築物または準耐火建築物とする。
・500m2以下の建築物で3階建て(地階を除く)の建築物については耐火建築物または準耐火建築物あるいはより規制が緩やかな「技術的基準に適合する建築物」でいい。 なお、木造建築物等の場合は、隣地から一定の距離内で延焼のおそれのある部分の外壁や軒裏は防火構造とすることが求められる。
ということです。

6. 一般的な住宅に置き換えてみる

東京によくある15坪の土地を考えてみましょう。
仮に15坪の土地に建ぺい率100%で3F建てを建築したとします。
15坪=49.58m2
49.58m23F=148.74m2

延床148m2ですから500m2以下ですね。住宅街の多くは延床500m2以下の住宅が多いように感じます。
ということは準防火地域においては"耐火建築物または準耐火建築物あるいはより規制が緩やかな「技術的基準に適合する建築物」でいい。"ということになります。
木造住宅でも技術的基準に適合するものや耐火構造の木造建築も近年認められました。防火地域でも3F建ての木造建築を建てることも可能です。鉄骨やRCよりも建築費の安い木造という選択肢もありますが、容積率を考えたら大きなビルを建築して貸したほうが収支が良さそうですね。

7. 賃貸住宅で考えてみる

上記のような建築物が街中に構成されているわけですが、部屋をかりる側からみるとどうでしょう?
耐火構造にするということは建築費が高いということです。
高くなった建築費は、かりる側の家賃に跳ね返ってきます。
駅近くや主要道路の近くといった利便性を求めるということは家賃が高くなるということです。

部屋を探す時にはどんな住まい方をしたいのか?家賃は払えるのか?といったことを今一度考えてみてはいかがでしょうか?

さいごに

江戸の火事の歴史から考えてみた防火地域と準防火地域、いかがでしたでしょうか?
難しい話になりがちですが、なるべく興味を持って最後まで読んでいただけるようにかみくだいて解説してみました。まさか江戸時代から防災対策がなされていてとは。
先人の知恵が現代にもきちんと生かされているのでありました。

それでは。