こんにちは暮らしっく不動産の門伝です。
先日、暮らしっく不動産に売却依頼があった中古戸建ての契約でした。
再建築不可という難しい案件でしたが、最後は大手の不動産に競り勝って無事成約に至りました。
再建築不可、築年数の古い物件では、「瑕疵担保責任免責」という条件を付けるのが一般的です。
「瑕疵担保責任」という言葉、初めて聞く人も多いと思います。
不動産売買で「瑕疵担保責任」は、非常に重要なポイントです。
高く売るには、瑕疵担保責任は付けたほうがいいのか。 でも責任を追って余計な費用が掛かってしまったら。
悩む人も多いと思います。
今日は不動産売却、不動産購入でポイントになる、瑕疵担保責任について書いていきたいと思います。
もくじ
1. 瑕疵担保責任を簡単に説明
瑕疵担保免責、「かしたんぽせきにん」と読みます。
難しい単語、漢字の連続なので難しい印象を受ける人も多いと思いますが、内容は簡単です。
「隠れた故障があったら、その部分は責任持って使えるようにしますよ」というのが簡単な説明です。
それではもう少し詳しくみていきましょう。
2. 瑕疵担保責任とは
瑕疵担保責任、「かしたんぽせきにん」と読みます。
不動産売買でよく出てくるワードです。
wikipediaにはこういう記述があります。
売買などの有償契約において、契約の当事者の一方(買主)が給付義務者(売主)から目的物の引渡しを受けた場合に、その給付された目的物について権利関係または目的物そのものに瑕疵があるときには損害賠償などの責任を負う(561条以下。売買以外の有償契約への準用につき559条)。これを担保責任というが、このうち目的物そのものに隠れた瑕疵があった場合の責任を瑕疵担保責任という(570条、566条)。
wikipediaより https://ja.wikipedia.org/wiki/瑕疵
もう少し分かりやすく訳すと。
不動産売買契約で、売った人が買った人に責任を負うこと。
責任の内容は、知らなかった、見つからなかったような大きな問題の箇所。
かなりざっくりですが、このような意味合いです。
不動産の場合として簡単に説明すると、その物件を使う(住む、営業するなど)のに大きな問題があること。
家で例えると以下のようにパターンです。
- 知らなかった雨漏り
- 柱がシロアリに食われている
- 家が傾いていた
こういうことがあると、家を使うのに大きな支障が出てきますよね。
不動産売買契約では、知っている部分については、きちんと言わなければいけないことになっています。
これ以外で、気付かなかった部分で不具合があったとき、責任を負うのが瑕疵担保責任です。
3. 民法と宅建業法の瑕疵担保責任
瑕疵担保責任は、民法と宅建業法(宅地建物取引業法)で決められています。
「知ったときから1年」、これが民法での決まりです。
ほぼ永久保証と同じです。(詳しくは6の時効を読んで下さい)
瑕疵、欠陥を知ってから1年であれば、売った人に責任を追求できる、これが民法で決められた瑕疵担保責任。
かなり重い責任です。
さすがにこれではやっていけないので、瑕疵担保責任をどうするのかを決めて、契約をするのが一般的です。
一般的には、中古住宅などの場合、瑕疵担保責任は3ヶ月と決めて契約をします。
古い物件などでは、瑕疵担保責任をなしとする「瑕疵担保責任免責」と設定する場合もあります。
しかし不動産業者別です。 不動産業者には厳しい決まりがあります。
プロだから厳しく。 これが宅建業法です。
不動産業者は最低2年は瑕疵担保責任を負わなくてはならないことになっています。(中古の場合)
次に民法と宅建業法の条文です。
3-1. 民法上の瑕疵担保責任
民法第570条 (売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
wikibooksより https://ja.wikibooks.org/wiki/民法第570条
簡単に説明すると。
売った人は、隠れた欠陥などがあった場合、民法の556条を適用します。
でも強制競売はのぞきますよ。
第566条 (地上権等がある場合等における売主の担保責任)
- 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
- 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
- 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。
wikibooksより https://ja.wikibooks.org/wiki/民法第566条
ここで重要なのは、3のところです。
簡単に説明すると。
不具合の発見から1年以内じゃないと、文句は言えませんよ。
3-2. 宅地建物取引業法上の瑕疵担保責任
宅地建物取引業法第40条 (瑕疵担保責任についての特約の制限)
- 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第570条において準用する同法第566条第3項 に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条 に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
- 前項の規定に反する特約は、無効とする。
wikibooksより https://ja.wikibooks.org/wiki/宅地建物取引業法第40条
こちらも簡単に説明すると。
- 不動産屋が自分のものを売る場合は、責任を厳しくします!
建物を引渡してから2年は責任を持ってください。 それ以下は、買う人が不利になるのでNGです。- ↑を守らないのはダメです。 その場合は無効となりますよ。
無効となった場合は、民法の「知ってから1年」という、ほぼ永久保証みたいな状態になりますよ。
不動産業者が売主(仲介ではないということ)の場合は、瑕疵担保責任は最低2年です。
これ以下の場合は無効となり、民法の「知ってから1年」というルールが定められます。
4. 瑕疵担保責任の期間
瑕疵担保責任について、契約書できちんと決めないと「知ってから1年」という民法上の厳しいルールになってしまいます。
これをやってしますと、ほぼ永久保証になってしまいます。
通常、不動産取引では「期間を決めて責任を負う」という条件を付けて瑕疵担保責任を負うようになっています。
不動産のルール「宅地建物取引業法」では、個人が売る場合、不動産屋が売る場合で分けられています。
4-1. 個人が売る場合
個人が不動産を売る場合、瑕疵担保責任の期間についてのルールはありません。
「自分のうちを売りたい」というのが、個人が不動産を売るということです。
この場合、「責任を負わない」という設定もできます。
(これは、瑕疵担保責任免責のところを読んでください)
しかし責任を負わないという設定では、買う側も「何かあるんじゃないか」と警戒をします。 売買価格にも影響してきます。
今まで住んでいて、特に問題がなかったなという場合は、期間を決めて責任を負う設定をするのが一般的です。
中古住宅などの場合は、3ヶ月という設定が多くなっています。
契約で必ず入るといってもいい、定型文です。
1.売主は、買主に対し、建物の専有部分における次の建物の隠れたる瑕疵についてのみ責任を負い、それ以外の建物の瑕疵および土地の瑕疵ならびに共用部分に原因がある瑕疵について、責任を負いません。 (1)雨漏り、(2)シロアリの害、(3)給排水管の故障 なお、買主は、売主に対し、対象不動産について、前記瑕疵を発見したとき、すみやかに通知して、修復に急を要する場合を除いて立会 う機会を与えなければなりません。
2.売主は、買主に対し、前項の瑕疵について、引渡完了日から3カ月以内に請求を受けたものにかぎり、責任を負います。なお、責任の内 容は、修復にかぎるものとし、買主は、売主に対し、前項の瑕疵について、修復の請求以外、売買契約の無効、解除または損害賠償の 請求をすることはできません。
このようにして、瑕疵担保責任の期間を決めて契約を結びます。
4-2. 不動産業者が売る場合
不動産業者が売る場合は、厳しく設定されています。
「プロには厳しい」という、良いルールだと思います。
不動産業者は最低2年間(引渡し日から)の瑕疵担保責任を負わなければいけません。
これは宅建業法で決められています。
これよりも短く設定したり、無しと設定した場合は、民法のルールが適用されます。
民法のルールの方が、責任が重いです。
普通ありえませんが、契約書の作り方を失敗すると帰って重い責任を負うことになります。(宅建持ってない人要注意!)
これは宅建の試験にも出たりします。
これから試験を受ける人はよく覚えておきましょう。
5. 瑕疵担保責任免責とは
瑕疵担保責任免責。
中古マンション、中古戸建てなど、中古住宅でよく出てくるワードです。
先ほどの「瑕疵担保責任」と同じような意味だろうと思う人もいるかもしれませんが、全く違います。
漢字が多いので、見にくいと思いますがよく見て下さい。 瑕疵担保責任に「免責」という言葉が追加されています。
免責とはこのような意味です。
免責【めんせき】
《名・ス他》普通なら負うべき責任を問わずに許すこと。(googleの辞書より)
「瑕疵担保責任免責」は、壊れているところがあっても責任を負わないという意味です。
5-1. 古い物件に多い
中古の不動産ではこの「瑕疵担保責任免責」という条件の物件が出てきます。
とりわけ築年数の古い物件、中古の戸建などが多い傾向です。
不動産図面だと、備考の欄に小さく書かれます。
この図面だと右下の赤枠の部分です。
この物件は昭和40年築と古い物件です。(2015年11月21日現在は募集中です)
このような古い物件の場合、瑕疵担保責任免責と条件にする場合が多いです。
5-2. 瑕疵担保責任免責=不良物件、ではない
瑕疵担保責任免責だからといって、危ない物件とは限りません。
「古すぎて大丈夫だとは思うけど、責任は負いたくないから」という理由で、瑕疵担保責任免責とすることが多いです。
先日、暮らしっく不動産で、昭和40年築の戸建ての売却をお手伝いしましたが、この時も「瑕疵担保責任免責」という条件で売り出しました。
最終的に、買う前に買手の希望で、床下に入って基礎部分からいろいろチェックを行いましたが、何の問題もありませんでした。
最後は調査に来た職人さんに「いい造りですね」というお墨付きをいただきました。
「瑕疵担保責任免責」が危ない物件ではなかったという良い例です。
全ての瑕疵担保責任免責の物件がそうとは限りませんが、建物を見る目があれば問題にならないケースもあります。
6. 瑕疵担保責任の時効
さきほど、民法では「ほぼ永久保証」と書きましたが、これは違います。
分かりやすくするために「ほぼ永久保証」とさせていただきました。
実際は、民法の債権消滅時効というルールがあって、10年で消滅することになっています。
民法の厳しいルール「知ってから1年」で契約してしまっても、10年間経てば瑕疵担保責任はなくなります。
6-1. 裁判所の判決
「民法の瑕疵担保責任は期間がないように解釈もできますが、時効も適用されます」という、判例も出ています。
- 判示事項
瑕疵担保による損害賠償請求権と消滅時効
- 裁判要旨
瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用がある
- 参照法条
民法167条1項,民法566条3項,民法570条
【要旨】
瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり,この消滅時効は,買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行すると解するのが相当である。
最高裁平成13年11月27日判決
裁判所HP 最高裁平成13年11月27日判決
7. さいごに
今回は、少し難しい内容だったと思いますが、いかがだったでしょうか。
「瑕疵担保責任」は不動産売却、購入で重要なポイントの一つです。
売却する場合は、瑕疵担保責任をどうするかしっかり考えた上で価格設定をすることをお勧めします。
「ここまで値下げ交渉が来たら、瑕疵担保責任は無し」など、交渉カードにも使えます。
それでは今日はこのあたりで。